なぜ英国の紅茶は8分も蒸らすのか

ブログをリセットしてお店の日記と一緒にしたのでたまに紅茶の話題を書いていきます。
お店の日記、更新頻度が2ヵ月に一遍とかやばめだったので一緒にすれば、もうちょっと更新するだろうと・・・。
紅茶タグをつけた日記にお店側からリンクしています。



さて掲題の件です。
なんでこんなエントリーを書くかというと、こういうブログを読んだからです。

http://blog.goo.ne.jp/aunties/e/3d809efbcae992f5dc19b39bd7092ed3
英国伝統紅茶は蒸らす時間が8分と長いのはなぜ?と言う質問を受けることがあります。

紅茶葉は熟成発酵した茶葉のため短時間では本来の味を引き出すことができません。

一般に2,3分の蒸らす時間、それ以上蒸らすとえぐ味、苦味と言った雑味が強くなり、飲める状態ではありません。

8分どころか向こうは茶葉を入れっぱなしにしてしまったりもします。
ですが、日本で同じことをやると驚くほど渋くなってしまいます。


ひとえにこれは水の硬度に原因あるとおもいます。
両親が英国の奥の方に住んでいたので私も何度か長期滞在はしたことがあります。
生活拠点なので当然料理をするのですが、あちらの硬い水(石灰質)でそのまま味噌汁をつくると恐ろしいことになります。英国の飯はまずいといいますが、そりゃそうでしょうよ…という感想です。


硬水のイメージがわかないかたもいらっしゃるかもしれませんが、硬水とはカルシウムやマグネシウムなどが多く溶けこんでいる水のことです。温泉の源泉をイメージするといいかもしれませんね。源泉などは硬水の極めつけです。
日本での一般的な飲料水はその対極にある軟水です。


硬水でおいしいご飯をつくろうとしたらカレーにするか揚げ物にしてしまかぐらいしか手はありません。
コントレックスでお米を炊く様を想像してみてください。
もちろんコントレックスほど硬い水ではありませんが、お料理に水をつかうのにはそれなりの工夫が必要です。



さて、この理由を説明するのに少々科学的なお話しが混じります。
茶葉の抽出は科学的な作用を説明すると浸透圧でおこなわれます。
浸透圧は中学校でも習うかとおもいますが忘れている方もいるとおもうのでwikipediaの説明を引用しておきます。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%B8%E9%80%8F%E5%9C%A7
濃度の低い溶液から濃度の高い溶液に溶媒が移動するように働く。

紅茶を入れる場合、濃度の低いのがお湯、濃度が高いのがお茶っ葉ですね。
この場合の浸透圧はお茶っぱからその成分(溶媒)が移動しようとする圧力のことです。


なので、お水自体にミネラルなど他に溶けているものがあると茶葉の成分が過度に溶出されることがありません。
これが向こうでは抽出時間を長くとってもいい理由になります。


ところが・・・日本の水はそのほとんどの地域で軟水に分類されます。
日本の紅茶高級店でも英国流ということで茶葉をいれっぱなしにしてしまうところがありますが、当然水が軟水であれば抽出が過度に進んでしまい渋いものになってしまいます。


英国流を模倣すると紅茶を入れるための温度は「5円玉程度の沸騰」とか「地獄の釜のように沸騰」などという表現が並びます。これは硬水においてはより高い温度でいれないと抽出が進まないからです。
(浸透圧は温度と相関性があります。)
ですが同じブレンドでも日本でそれをやってしまうと結構渋い紅茶に入るはずです。
水が違う以上、日本と英国では淹れ方や入れる時間を変える必要があると自分は考えています。




お茶全般に言えることですが、お茶は渋みであるタンニンと旨みであるテアニンで主には構成されています。
軟水で長い時間抽出すると渋みであるこのタンニンがでてしまいます。
とくに低発酵(低酸化)の緑茶やダージリンなどではその傾向が顕著です。
緑茶の甘みを楽しむために低温度で淹れるのはそれなりの科学的な裏付けがあるというわけです。
なので葉っぱの色が緑っぽければ緑っぽいほど低い温度でいれたほうが甘みがでておいしく入ります。
(香りを楽しむのであれば高い温度でどうぞ)


渋みのタンニンは軟水ではより早くでてきてしまいます。温度はその速度を速めます。
旨みを楽しもうとするならば温度や時間は、伝統やスタイルではなく、使う水にあわせたほうがいいです。



渋い(ボディの強い)のが好きな人もいるので一概に何がいいとは言えないのですが、向こうのブレンドをこちらにもってきて同作法でいれたとしても同じ味にはならないんだよということを言わさせてください。
特に、最近流通している茶葉は抽出時間を短くすむようにBOPやCTCなどに加工されているものが多いのです。
1分や2分で入るものを長い時間抽出すれば当然渋みが増しますのでご注意ください。




なぜ英国の紅茶は長時間高温で蒸らすのか?
そう入れたほうがおいしいからです。
だからといって、日本でもそうだとは限りません。





あと完全余談ですが紅茶は酸化発酵であり熟成発酵とはちと違います。
プアール茶とかの発酵とはちょっと経路が違います。
ここらへんはまた別のお話しなのでまた今度。



(´・ω・`)。oO(女性受けしなそうな理系文章だね……)