フルフィルメントとロジスティクスと価格設定

万年赤字な紅茶屋を死なない程度にやっていて、このご時世がら小売が死なない程度にやるためにアマゾンや楽天なんかにも出店しとります。のんびりやりすぎて楽天やヤフーでは出店費用分も稼げてねぇんじゃねぇかと思う。お店としては真面目にやっているつもりなんだけど商売の才覚があんまないのさっ



昨日、楽天の店舗管理用画面にログインしてびっくりしてアゴが抜けた。
ログインするのに規約が変更になったむねのチェック画面が出ていて、そこに変更詳細はこちらのリンクがあった。何が変更になったのだろうと、ふと気になって詳細ページに飛ぶとオプション料金値下げします!のあとに、送料にも課金するよ! 適用は11月1日だかんな!!というジャイアン的な文章がぺろんと出てきた。
おれの抜けた顎からとうとうヒヨコが出てきたのであった。



先日の楽天facebook連携のオプト・アウト騒動「facebook連携を望まない人は申請してください。それ以外の人は月々課金するのに同意したこととするよ、半年解約できないからね!」のときもそうだったが、楽天の契約変更はおっかなすぎる。


今回はオプト・アウトでこそなかったものの、ログイン画面にチェックボックスひとつ、日常受注業務で急いでたりしたら、仕様変更に気が付かないショップとかもあると思う。しかし、これは商品の値段設定にかんする重要な変更なので気が付かないショップは死んでしまう。売れてるのに減価割れちゃってたみたいなことになる。まじで気をつけて。楽天に出店している店舗の友人がいたらそれとなくいってあげてください。死活問題というか、まじで死ぬから。


値下げ分は、うちみたいな弱小零細店にはメリットどころか関係ない。なぜならそんなオプションは元よりつけていないから。CSVのダウンロードや、いまどきFTPがオプションで月々課金&従量課金だとか言われても、ぇ、あ、うんというぐらいのリアクションしかとれない。楽天APIは利用したいけれど・・・



送料への課金について

物流においてコストが発生する以上、送料は無料ではない。商品価格に埋没して見えなくするだけだ。
配送距離や重量やサイズが違うところにものを送るのにコストが同じということは熱力学第二法則に反する。だから本来は違うはずなんだけど、平たくならして埋めて見えなくさせることがある。零細企業は規模の経済による効率化がおこなえないのでその影響が見えやすい。


同じことが商品単価にも言える。
関東近県に60サイズのものをおくるのは600円でいくが、四国に送るのは1000円を超え北海道では1200円になる。600円の価格差を吸収することはできるか?お客さんが5000円買ってくれればなんとかできるが、500円の商品では吸収しようもない。



うちは茶葉がメインの取り扱いなのでそれにあわせて商品合計金額でメール便や定形外郵便のような配送方法も用意している。茶葉2つ程度の購入であれば発送サイズ的にもメール便を利用できるので注文商品合計金額が1300までは送料160円で発送できるような設定だ。

商品によっては80円で送れるものもあるが、値段のわりに重量もサイズもあわず390円ぐらいになってしまうものもある。極端にひどいものは商品ごとに縛りをいれたりしているが、人によって安くなったり高くなったりの平均をとっている。



商品価格に送料を織り込めないのは商品単価、顧客単価が安いからだ。
100円分の注文で実質送料が80円だったからといって160円の送料を請求したとしても、お店側がこれで儲かることはない。100円の商品だろうが、1000円の商品だろうが、梱包材や発送の手間を考えればほぼ変わらず、100円の商品の粗利で発送にまつわる販売管理をひねりだすことはできないからだ。+80円ぐらいでは人件費分は補うこともできず赤字だが、サービスとの価格間で折り合いをつけるよりない。


その折り合いをとっつかまえて、店舗間で不公平だと送料により儲けていると言われるのはやるせない。ある売買をすることでお店の負担が増すということは、他のお客様へ転嫁されているということにすぎない。それが公平なのかと。数を多く買う人が多く負担するのが公平なのかと。
100円の商品に送料を埋没させて120円にするのはどうなのか?1つしか購入してくれなかったら持ち出しだ。4個購入したら?10個購入したら?購入個数をセットに?




商品の価格設定について

商品の価格を設定するにはいくつかのやり方がある。
たいした原価じゃないのだけどブランドやらで高級感をだしてプレミア価格を設定する「知覚価値価格設定」やら、マークアップ価格設定、ターゲットリターン価格設定などだ。
ターゲットリターン価格設定については自動車や家電など大規模な設備投資が必要なものにつかわれ、マークアップ価格設定は原価にたいして一定の利益率をうわのせして価格を決めるやりかただ。
物販にはマークアップが多くつかわれる。業界の人には掛率、掛け値といえばわかりやすいかも。



価格=単位コスト/(1ー期待利益率)



というような簡単な式がある。単位コストには原価とよばれる製造や仕入れごとにかかる変動費と、地代や人件費などの固定費にわけることができる。
家電などは利益率は低いかもしれないが一個あたりの利幅があるため、利益調整力がある。他方、物販品は利益率は高いが、一個あたりの価格が安いため、ひとつあたりでは数十円しか儲からず、そこにかかる販売管理費を吸収させるのが困難である。
車を1台盗まれるよりも、駄菓子を万引きされるほうがダメージがでかいのはどういう想定のときか考えてみて?


それと同じことが今回の送料についての課金でも言える。
販売あたり600円の送料がかかるとするお店があった場合、楽天課金を15%として考えると、90円が新たに店舗に課金されることになる。この90円は商品の変動費になり、単位コストをそのまま押し上げる。
期待利益率の設定と顧客単価如何によっては、利益が出る水準までの販売数量に届かなくなるばかりか、売れば売るほど赤字という事態に陥ることになる。
食品のような非規格物は預け在庫で、そこから発送してもらうフルフィルメントには不向き。
紅茶屋としてはお客さんにもお店にもデメリットしかない。



11月からの適用で時間はあまりない。
小売で商品単価が安いお店、資金体力がない零細は本当に年が越せなくなるので価格設定についてまじめに考えなきゃいけません。


うちのお店は先にもあげたように、遠方の方も安く送れるようにというのと、茶葉に最適化して送料を組んでいるので商品価格に埋没させるのはよくないと思うので、送料を15〜20%ぐらいあげる方向で計算せざるを得ないかなと考えています。細かくは計算してみないとわかんないや。



んー。
ほかのお店さんどうするのかな??
・・・。はぁ。



楽天の"出店料見直し"に波紋
http://www.tsuhanshinbun.com/archive/2012/09/post-1260.html