経済景況感と日本の賃金相場について

景況感

東京商工リサーチにより7月の企業倒産状況が発表された。


2009年(平成21年)7月度 全国企業倒産状況
http://www.tsr-net.co.jp/new/zenkoku/monthly/1188361_807.html

 負債総額は、前年同月比44.2%減で今年最小を記録し、4カ月連続で前年同月を下回った。月次負債総額が3,000億円台に低下したのは、2008年2月(3,652億2,000万円)以来1年5カ月ぶりのこと。

細かい情報を追っても好感できる情報が多い。
世界金融危機以来ずっと追いかけてきたがひとつ山を越した感じだ。
ウオッチャーとしては刺激がなく面白くないが、生活するものとしては歓迎したい。

◎従業員数別:5人未満の構成比が今年最高の61.7%

末端にまで波及したようだ。
中小の景気悪化、行き詰まりはこれからかもしれないけど、全体的にみればこれでようやくひと段落なのではないかと思う。
さて、被害状況が明らかになった今、有る意味復興はこれからが本番。


賃金と好景気

日本銀行ワーキングペーパーシリーズを話題にされていたエントリーがあった。
めずらしくもホットエントリーしている。

日銀レポートによる「なぜ好景気でも賃金は上がらなかったのか」-
http://www.garbagenews.net/archives/929802.html

この時期に好景気というと鼻で笑いたくなるが、2年ほどまえまでは企業は業績をのばしていた、そのときに何故賃金が伸びなかったのかという日銀の中の人による考察である。


原文の日本銀行ワーキングペーパーシリーズがとても面白かったので、自分も書いてみる気になった。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/data/wp09j05.pdf


何故賃金上昇しなかったのか?
集計できるデータもないので、ただの思考実験であるがせっかくなので書き留めてみようかとおもう。

企業の賃金相場に関する考察

企業がひとをないほうする様は細胞のようなモデルをとると仮定する。

細胞(セル)のひとつのサイズはその企業の可処分所得(人件費に引当可能な利益)に相当する。


ひとつのセルにいっぱいの要素が入っているとひとりあたりの分け前が減り、内圧が高まり、分裂するか他の細胞に要素が移動する。


だが、実際には要素の移動はそこまで自由度はたかくなく硬直的である。
この時、要素移動には係数的な抵抗と、エネルギーバンドが伴いこのギャップを超えられないと移動が発生しない。


人間同士のゆるやかなつながり(しがらみ)や転職などのエネルギーを多く必要とする状態が、
賃金に業界間、業界内格差を生むが、いずれその密度はある程度揃うことになると思う。


企業業績がのびた時代に賃金が伸びなかったのは、希望する条件での転職が困難だったというセル間の隔絶があったからなのではないかと思う。
リストラなどが進み人材雇用の整理が進む条件下では賃金上昇圧よりも、必要なエネルギーギャップのほうが大きかっただけなのではないかと思う。
人材の硬直性が解かれた条件下ではもっと賃金交渉も労働者が優位になったことだろう。

ワーキングペーパーでは不確実性の増大をうたっているが、これは企業だけが直面した問題ではなく、被雇用者も将来を考えるにあたり考慮した外因的環境条件ではないかと思う。


つまり、企業にとって辞めてほしくない有能な人材が環境の不確実性を理由に辞めなかったので企業側は賃金をあげる必要がなかったのではないかと思う。


・・・。
ただの素人考えだけども。



・おまけ
気になった図をあげてみる。

生産年齢人口の減少っぷりが結構なものだ。

成長こそしていたものの、企業、経済そのものが衰退フェイズに入っていると経営陣および従業員はきがついていたのかもしれない。
企業の成長性、成長余地は縮小する市場下では賃金もあげることはできない。


ふーん。
後、大企業とか作業の分業が進んでいて、そのノウハウとかが人材についてこないというのもあるよね。
賃金をあげてまで雇用を確保しつづけたい人材・・・
人的依存の部分が急速に薄れつつあるように思う。