韓国の国家戦略と日本の戦術

アナログ停波とともにテレビとはおさらばする予定だったが、年寄り連中からテレビをとりあげるわけにもいかずしかたなく地デジになった。うちはビルの谷間にある難視聴域で、アナログのときは隣のビルから電波を引っ張ってもらっていたのだが、そんな30年も前時代の当事者同士の約束にデジタルになったらどうするという約束などあるわけもなく、しかもマンションとして分譲して権利者がばらけていて話し合いは出だしで躓いた。
アンテナ工事費はざっくり15万と言われた。祖父の家などもあり1軒ではないので見積もりがアホ臭い金額になった。テレビを必要としていない自分の価値観からすれば、ばからしいお金の使い方この上ない。投じたお金に見合う価値を回収する予定も見込みもない。
最終的にはフレッツ光のテレビに契約して事をすませた。95歳を過ぎた祖父母の家のテレビまで新品になった。かようにして我が家は地デジ鹿の前に陥落したのだ。


そうまでして観たかったテレビである。ザッピングしていていたらサヘル*1が出ていたので、なんとなく見てしまった。NYの世情を話すのが飲食店経営と書かれた普通のおじさんだったりとよくわからない番組だったけど視点や分析がそれなりに面白かった。




数日前に見た内容をうろ覚えで話すので細かいところは間違ってるかもしれない。
NHKオンデマンドでも見れるので興味があるひとはみるといいさ。

http://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2011029885SC000/
NHKと各国の市民をインターネットで結び、世界の今を知る。「ホットポイント」は、ドイツとスウェーデンを撃破し、決勝進出を決めた“なでしこジャパン”の快進撃。開催地ドイツと決勝の相手アメリカと結び、高まる日本の評価と現地の熱気を聞く。「フォーカスオン」は、世界トップに躍り出た韓国家電。国内市場は小さく資源もない韓国が、かつて世界市場を席巻した日本を追い抜いたのは、なぜなのか。その秘密に迫る。


すごくざっくりあらましを紹介する。


ベトナムでは韓国家電が3割ぐらいのシェアを占めていて、日本製は唯一テレビぐらいしかシェアがない。
ベトナムのテレビでは韓国ドラマなどが週に何本も流され人気。日本の番組はない。
他の国へドラマなどを卸すのは韓国政府のイメージ戦略(権利料とかが安いんだよね?)
その結果ベトナムの人は馴染みのある韓国メーカーの家電を買う、しかも安い。(LG、サムソン)


エジプトでは、タクシーに韓国車を導入。(ヒュンダイ
その他の国に対して国家レベルでのプロモーション活動がなされているなど、他の国の情勢も。
韓国が経験した経済危機やその際の財閥解体、TTP加盟などについてもきちんと時間を砕いて説明していた。



と、まあそんな感じ。


自分の意見をいうまえに、まず、前知識として現在の日本を取り巻く状況を書きつらっておく。
今月は、アメリカはDebt(債権)のお話しばかりだ。ひどい例をあげるとアメリカが8月にも破産するかもしれないとかそういう煽られ方をしていてそれを馬鹿らしいと一笑に伏せないぐらいには現実味を帯びていた。先月のヨーロッパはギリシャの危機をEU加盟国が引き受けなきゃいけないとかで、ヨーロッパ版リーマンショックがやってくるとかそんな煽られ方をしていた。大きななにかがきそうでこない状態が続いている。あるいはもうすでに来ているのかもしれない。そんなこんなで災害で経済が痛んでいるハズの日本の円高がすすみ1ドル78円になってしまっている。


78円で貿易立国の国の経済が成り立つ由もない。1円円高になるとトヨタだけで300億円ほど”利益が”ぶっとぶ。シャープの会長が「為替や法人税、環境・労働規制など、この国の問題を数え上げればきりがない。日本で製造業をする合理性はないという状況で、原発問題がとどめを刺した」*2との発言がニュースになったが、そう、日本は震災どうこう原発問題以前に経済的合理性を失ってしまうぐらいには窮地においつめられているのだ。合理性がなければあとはただの意地だ。


他方、韓国はウオン安など国家単位のダンピングに成功し、国をあげてのプロモーションをやっているようなもの。実に徹底しているニダ。もちろん問題はある。通貨安になれば調達力が下がるし、TTPなどに加盟し国内農業などを犠牲にすれば安全保障上の問題もつきまとう。サムスンだけで韓国のGDPの2割になるバランス感覚は、リスクヘッジができているとは言いがたい。これが最適戦略かはわからないが、だが、はっきりと分かるのは、国や産業がそうしようとしとしてそうしているという事だ。


他方、日本は中途半端に国内マーケットが大きかったため選択肢がいくつかあった。それが不徹底をよび現在のような膠着状態をうんだ。国内マーケットは人口動態からみればかなりの確度でさらなる減衰が予測できる。だが、衰退するからといって一体何ができるだろうか? 若いヤツや若い会社が減るパイのなかで奪い合いをしてもありつける餌はすくない。国外の市場に挑むことは許されず、あまり先がないなと思いながらも以前までと同じようにやっていくしかないし、それが最も確実なのだ。チーズはどこに消えたなんていう本が昔しあったな。


そういえばこんな話しを聞いたことがある。
経産省だかどこだかの役人に、工業や製造業などに比べIT関係には国や自治体などの助成が殆どない理由を聞いたら『ITは助成をしなくても元気だから』という素敵回答があったというのだ。そうなのだ。社会的弱者や弱った産業、衰退してしまった商店へ富の再分配がおこなわれる。競争優位性をもった点を伸ばそうという経済的合理性にもとづいた判断は民間にまかせ、日本において公は弱者への富の再分配を担当するものなのだ。だから詰将棋のような緻密さで「できるだけこのまま」という戦術が選択される。
値下がりする株をこれ以上値が下がらないように、値上がりした株を売って買い支えしているようなものだ。そのような振る舞いがうまくいく期間もある。だが弱者と強者の割合や定義がおかしくなったり、分配するほど富がなくなったらどうなるだろうか?
韓国のような戦略をとる?いや、まさか。やれないだろうし、やらないだろう。不安を覚えたとしても今更なにができるだろう?いままでどおり局所戦で最適化しながらやるより他ない。



つうか、傍目気取って、世間を眺めてみてもよく状況がわかんないんだよね。
もしかしたら今は時代の転換期なのかもしれないが、もしかしたら、そうじゃないかもしれない。絶滅するまで現状維持戦術で防衛戦をしなければいけないのかもしれないし、なにか変わってうっかりうまくいくのかもしれない。


co-revolutionでも、できるといいねーと、のんきにおもっているのだよ。
結構いい言葉じゃね? co-revolution


そんな制度疲労の真っ只中で地デジは良きにせよ悪しきにせよ変化の一旦。
放送大学で人口減少がなんちゃらといっていたおじさんの鼻水だか汗だかが綺麗に口の中にまで垂れるのをみて地デジの凄さを知ったのでした。