長期住宅ローンはなぜ意見が割れるのか

経済などを中心にした全体としての予測と、個々人がとりえる戦略が分かれるからじゃないの。

夫が妻の「家を買いたい!」を断れない理由
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20110203

おっかねぇからだよ!

今の日本だからこそ35年の住宅ローンを背負う本当の理由
http://d.hatena.ne.jp/gamella/20110203/1296744706

住宅ローンが借りやすいことがよく知られているからだよ!


全体のトレンド

高度経済成長期は定期預金金利が10%もあり、給料が次の年には倍になったなどという話しも聞いた。
ひるがえって現代の日本。2年目の社会人の給料は住民税などの関係で昇給しているのにもかからわず手取りは下がったなんていう話しも聞く。だが冷静に現状を観測すれば日本に高度経済成長期は再びやってくることはない。


日本の経済成長性

過去の時期の経済成長率などは各所でまとめられているが、次のページがわかりやすくまとまっている。


http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4400.html
56-73 平均9.1%
74-90 平均4.2%
91-09 平均0.8%

2008年は-4.1%、2009は-2.4%で、2010年は+0.8〜1.0%ぐらいだろうと予想されている。
経済成長率と政策金利、もちろん銀行貸付金利は連動する。


物価と儲け

もうひとつ知っておかなければならないのは、カネとモノの関係。
デフレとインフレについて定義なんて覚える必要はないが、本質的なことは知っておいたほうがいいとおもう。


物価があがるのであれば、「あとで払うね」という約束のもと信用買いできれるのはお得だ。
香辛料が値上がると思えば借金して買う商売人がでてくる。儲けを最大化できるからだ。
香辛料が値下がるとしって借金して買う商売人はいない。損が膨らんでしまうからだ。
持っているものが値下がると思えばできるだけ早く現金化しようとするし、値上がると思えば、お金を集めてまで在庫を確保しようとする。


結果から観測してみよう。
新卒の給料が2万だったなどといっていた団塊前の世代は家を買った。当時の給料4年分の買い物をしたなんていっても100万分でしかない。もし35年後の今まで支払を伸ばせる契約が結べたのであれば、現代の給料数ヶ月分にしかならないだろう。これは毎年給料が上がり続けた(経済成長率があった)結果からだ。預け金利が10%ならば、100万円の貯金も7年で倍に15年で4倍になる。


物価があがる環境下であれば、信用買いがお得である。逆にモノの価格が下がり続ける状態であれば、例えばリースとか信用売りをして、できるだけ現金を確保しておいたほうがお得だ。
え、見通しが0.8%? そりゃ人によって意見割れるよね。
手数料分にもなりゃしないし。お得も損もないよ。


住宅需要

住宅事情と人口には相関性がないというひとはいないよね?
住宅を必要とする若年者生産人口は35年後には30%減少する。30年先の人口の減少具合は現在の0歳児の数と今現在の35歳の数を比較するだけで簡単に確認することができる。
20年後、死亡率の急激な変化や移民の流入をファクターを考慮しなければ人口は次のような分布になる。
http://d.hatena.ne.jp/kuippa/20110105/1294250834

人口が減れば住宅需要は下がる。需要が減れば価格は下がる。
全体としてはそんな感じ。


個別に考慮すべき事案

家を買わないことで家庭内不和が生じ、家庭内不和が生じた結果から精神的、肉体的においつめられ挙句経済的損失が予測できる場合、それは立派に家を買う理由になりうる。
また日本のような比較的小さい社会コミュニティでは経済的合理性よりも関係性が優先されることがままある。住宅ローンをセールスする人物が借家では説得力がないだろうし、両親や親戚へのメンツという動機もあるだろう。そしてなにより、満足感という人により評価額の異なるものを一様に比較するのは困難なことだ。
家が買えるなら破綻してもいい!という価値観をもった人は確実にいる。



また、住宅ローンはもっとも低利で借入しやすいローンのひとつである。実際に先行き不透明感が多い現代において、”現金を確保するため”の住宅ローンという側面もあるようだ。組めたから買ったという人もいるし、組めたら買うという人もいる。審査などには在職期間などが関係してくるので、転職まえにローンを組むひととか、会社の好決算が続いたからという理由で組むひともいる。これらも十分に経済的合理性をもってローンを組む理由になるよね。


土地価格があがった地域は東京都の市区町村単位には残念ながらひとつもないが、細かい地域でいえば土地は下がっても坪単価はあがったところがあるとかないとか。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2010/03/60k3j100.htm
http://www.zaimu.metro.tokyo.jp/kijyunti/22kouji/07taisyou-chizu.pdf
個別にみれば伸びている会社や地域はもちろんある。


統計にはまだあらわれてないのでわからないけど、まあ上がってるところもあっても不思議ではない。
そう、そういう意味では統計に表れない情報や可能性は山ほどあるのだ。
もしかしたら移民とかで人口爆発する可能性は捨てきれないし、中国人が都内の土地を買いあさって土地建物価格は北海道ニセコのように顕著に上昇するかもしれない。財政健全度をみればハイパーインフレの可能性をまったく考慮しなくていいわけでもない。つまり、まあ未来何がおきるのかなんてわからないものさ。
なにかっていうと、したほうがいいとか、すべきとか、何も考えずに右にならえで行動しできるほど単純明瞭な時代はとうに終わったお。


それでもこれはないなと思う物

・頭金なしとかで変動金利で住宅ローン
インフレにふれても恩恵がないとかなんなの?
・ノンノンリコースローン
ローンが返せなくなって住宅を手放してもローンだけは残るってどうかしてるよね。
金かしてる側はリスクを負わないってことじゃない。連帯保証制度とか(゜Д゜=)ノ⌒゜
・借地権
最近注目株。あと10年
・法定相続人
こんなんもう制度疲労。でも農地とあわせて解決まであと30年ぐらいかかるかもね。わっかんないや。


おまけ

国は住宅を買って欲しくしょうがないわけじゃなくて、お金を借り入れてほしくてしょうがないひとたちの意向をうけてるだけなのかなと思うよ。不動産の価格が下がって困るのは、それを担保にお金を借りている会社とかがおおいからじゃない。固定資産税さがっちゃうと困る自治体は多いんじゃね?

http://www.kantei.go.jp/jp/zeicho-up/1107/35-1.html#10
この表で見る限り昭和60年までに買えたひとはお得だったかな?