15歳じゃない人達向け、日本の経済のこれから

元ネタ

15歳の君たちに告ぐ、海外へ脱出せよ - Rails で行こう!
http://d.hatena.ne.jp/elm200/20100109/1263042636
一言で言えば、日本に希望なんかない。日本を変えていくしかない。
物事を変えるには二つの方法がある。一つは、直接抗議すること。もう一つは、逃げることだ。

なんとなく思ったことがあったのと、調べておきたいことがあったので書いておく。
個人的な世界感を言うならば、まあ、日本人が成功しやすいのは日本だろうと思っている。
日本で成功できない人は海外に行ってもムズカシイし、海外でなんとかなるひとは日本でもなんとかなる。
成功したときの報酬量が違うだけで、海外にいくとハイリスクだけどハイリターンにもなりうるというだけだと思う。


しかしながら、日本人がちょっとでも上を目指したなら海外は避けて通れないし、日本の大手でも出世したら海外が待っている。もはやどの業界にいってももはや不可避なんじゃないかとおもう。
うちの親の世代でさえ企業勤めで海外転勤をしていた。若い層で出世しようと思ったらなおのことだろう。
日本で頑張るということは日本の看板をしょって海外でも働くということだ。
田舎にひっこんでお野菜でも作ろうとしてもそれで生活をしていこうとしたら競争相手は海外だ。
トラックでの国内輸送費より近隣海外から船で運んだほうが安いのだ。いたしかたあるまい。
カボチャはトンガからやってくるんだってよヽ( ´ー`)ノ
いずれにしろ、何をやるにしても先を考えて仕事をするならば避けてはいけないのではないかと思う。
目の前にあらわれた仕事だけやっつけるワーカー路線であれば、海外とかは気にしないですむけどね…。


さて、日本に希望はないか?
希望という言葉を使うと誤解を産みやすいが現状とそこから推計できる将来をよくみておく必要があるとおもう。
希望をもつのもいいし、絶望するのもいい。
自分の人生に希望をもてるように各自の状況にあったやりかたをやるのがいいとおもう。人それぞれだ。


さて、現状分析。


人口の年齢構成をみてみる
平成17年国勢調査
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001005118&cycode=0

世代人口 現在を100
20 〜 24 7,350,598 10.66
25 〜 29 8,280,049 12
30 〜 34 9,754,857 14.14
35 〜 39 8,735,781 12.66
40 〜 44 8,080,596 11.71
45 〜 49 7,725,861 11.2
50 〜 54 8,796,499 12.75
55 〜 59 10,255,164 14.87
合計 68,979,405 100 100

これが2006年国勢調査 現在の年齢別構成だ。
20〜59歳を労働生産として抜き出した。

10 〜 14 6,014,652 9.62
15 〜 19 6,568,380 10.51
20 〜 24 7,350,598 11.76
25 〜 29 8,280,049 13.25
30 〜 34 9,754,857 15.61
35 〜 39 8,735,781 13.97
40 〜 44 8,080,596 12.93
45 〜 49 7,725,861 12.36
合計 62,510,774 100 90.62

死亡などによる人口の自然減を無視すると10年後には、このようになる。
2006年と比較して10%労働人口が減少する。
毎年1%づつ経済成長しても毎年1%づつ人口が減るので、より高い生産性をあげたとしても経済は衰退する。
GDPについて、アジアは毎年10%近い成長を続けているなか日本はこの10年1〜2%、それでも頑張っているほうだとおもう。

0 〜 4 5,578,087 9.58
5 〜 9 5,928,495 10.18
10 〜 14 6,014,652 10.33
15 〜 19 6,568,380 11.28
20 〜 24 7,350,598 12.63
25 〜 29 8,280,049 14.22
30 〜 34 9,754,857 16.76
35 〜 39 8,735,781 15.01
合計 58,210,899 100 84.39

さらに20年後、現在15歳の子が成人、社会で活躍するころにはこのようになる。
日本の労働人口は現在より15%減少する。
国際競争力をもったまま現在の生活水準をキープするためにはこれを補う生産性の向上が求められる。
生産性向上のために過疎化と都市化の二局化はより顕著になるだろう。


別の切り口でみてみる。

世代人口
25 〜 29 8,280,049 19.42
30 〜 34 9,754,857 22.88
40 〜 44 8,080,596 18.95
45 〜 49 7,725,861 18.12
50 〜 54 8,796,499 20.63
合計 42,637,862 100

年功序列が成立しているとする。
現在50〜54歳には80%の年下の部下になりうるひとがいる。

15 〜 19 6,568,380 16.41
20 〜 24 7,350,598 18.36
25 〜 29 8,280,049 20.68
30 〜 34 9,754,857 24.37
40 〜 44 8,080,596 20.18
合計 40,034,480 100

10年後の構成はこう。

10 〜 14 6,014,652 15.84
15 〜 19 6,568,380 17.3
20 〜 24 7,350,598 19.36
25 〜 29 8,280,049 21.81
30 〜 34 9,754,857 25.69
合計 37,968,536 100

20年後、現在の30代が50代になるころには、74%になる。

0 〜 4 5,578,087 17.74
5 〜 9 5,928,495 18.86
10 〜 14 6,014,652 19.13
15 〜 19 6,568,380 20.89
20 〜 24 7,350,598 23.38
合計 31,440,212 100
類推 4,938,180 17.82
類推 5,248,390 18.94
0 〜 4 5,578,087 20.13
5 〜 9 5,928,495 21.4
10 〜 14 6,014,652 21.71
合計 27,707,804 100

0〜4歳と5〜9歳の比率から-5歳-10歳の人口の数を類推した。
20%がたかだか数%変動するだけなのだが、10歳ごとの幅で比較してみると、それぞれ39%、45%、47%、44%、43%となる。
若い年齢の方が比率として少なくなるので年功序列のピラミッド構造が維持できなくなることが予測できる。
50代に対する新入社員の割合を計算したら相当しょっぱい。
年功序列は現在50歳以上の年齢構成下まででのみ機能する制度だ。


年金じゃないけど、年功序列体制も人口年齢構成をみれば維持が難しいことが見える。
大企業については、今人気があるからという理由からだけで将来もそれが続くとは思ってはならない。
法人の寿命は30年とも50年とも言われるが、栄華を極め続けたまま30年続くことはまずない。
就職したい企業ランキングTOP10常連だったJALがいい証左だろう。*1


かといって、これからは中小企業の時代かといえばこれも明確にノーだ。
中小企業は既に衰退フェイズに突入している。こちらは中小企業白書をみるとがっくりする感じで見通すことができる。

中小企業白書
http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/index.html
http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h20/h20/index.html


つまり現在の法人という制度形態がどんづまり下にある。
ここに改善の見込みはあるか?
個人的な考えを言うならば、ない。


大企業や中小企業という現在の形態は高度成長期にもっともマッチした形態であり、2000年以降の熟成成長後(ゆるやかな衰退フェイズ)にはマッチしていないのではないかと思う。
現在はまだ滴定下における当量点に達していないが、このままポタポタと反応を続けていけば平衡が崩れる状態がくるだろう。人口という指標だけでもその仮定は20年先まで見通すことができる。

人口動態は人類が唯一確実に予測できる未来であると言ったのはドラッカーだっけか?
平衡状態が崩れたら変化は急激だ。
先日都道府県の経済をしげしげ眺めてたが(http://d.hatena.ne.jp/kuippa/20091226/1261828979)、既に残念な地域も……。日本というネット(グロス)で考えるとかなり厳しいけど、東京や関東だけならまだ芽があるかなとか思ったりもしましたよ。


人間に寿命があるように法人にも寿命はある。
環境の変化に対して適応がゆるやかだと制度が疲労し、淘汰される。生物と一緒。
近年の経済の乱調のような環境ショックにより、多様性がない業界は淘汰される。これも生物と一緒。


長期的なトレンドを考えずに動くのはハイリスク。
衰退フェイズに流れに身を任せるのはハイリスク。
年功序列下、経済衰退下において現状の流れに身をまかせてもローリターン。
ローリターンのところでハイリスクな戦略をとるのもどうかとおもう。
それを見かねてelm200さんは、脱出したほうがいいんじゃないの?ということなのだと思う。


だが、ただ流れに身を任せるだけでなく、リスクをとって挑んでいけば、変わる可能性もないわけではないし、何かイノベーション、いやさ!レボリューションが生まれる可能性も捨てきれない。
そういう硬直状態を打開するのは結構面白いんじゃないかと思う。
もっとも、アジアの成長すらとりこめなかった日本でそれをやるのは相当シンドイ。
だが、それはそれで死屍累々になれば富栄養化になるので、そこまでいけばまた何かが生まれる。
衰退市場でどんなに頑張っても無駄だという経営の何かがあるが、無茶プレイが好きな人にはこれからの時代は結構面白いんじゃないだろうかと思う。

竜馬的な人でてくるのを楽しみにしておりますですよ。かもーん。



余談。

こういう数字をみていると楽しくなって、つい夢中になってしまう。
中小企業白書おもしろいなぁ…。
WEBで読めるの知らなかった。あとでもっと読もう。
あかん…。

これみてておもったけど、大企業のシェアが大きい業界は中小の参入余地がある業界なんじゃないかなとおもう。
http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h21/h21/html/k9100000.html
情報通信、医療福祉、複合サービス。電気ガス系のインフラは参入障壁があるのでのぞくけど…。でも、太陽光とかそういうののオプティマイズとかをやる中小とかは芽があるんじゃないかな。
太陽光発電の最適制御プログラムとか送電経路最適化で中小企業参入できないかな。
http://www.research.ibm.com/trl/projects/optsim/logiopt/index.htm
すげぇ、こんなのあるんだ。
オペレーションズ・リサーチってぽっぽ首相がやってたやつじゃね?
ロジスティクスになるとだいぶ様相が違うけど。ここらへんも面白いよね。
ぽっぽさんは専門性を発揮して、内閣をフェイルセーフにすればいいとおもうんだよ。


・・・。
まじめに書き始めたのに終わりはいつもぐだぐだ!


追記

海外脱出アドバイスのダメなところ
http://rionaoki.net/2010/01/2682
農村から都会に出てきた人が上京を勧めるのと同じだ。迷っている友達にアドバイスをするのはいいが、家族関係や仕事でそれができない人まで含めてこの村は終わってるから早く出て行こうなんていってどうしようというのだろう。

上京した人が農村に残った友達にアドバイスする様、海外からの警告も同様、善意のアドバイスではある。
でも、人によって取り巻く環境や価値観は違うし、わかってるけど出れないんだよ!っていう人もいるとおもう。
それが拒絶をうむのかもしれないですね。

1.日本の{社会|労働市場|教育制度|政治|文化|その他}はもう絶望的。

自信をもって海外移住を勧めるわりには1の前提の吟味はお粗末なことが多い。

絶望的っていってしまうから角が立つのかな。
都会の便利な生活よりも自然に囲まれた生活が好きなひともいるだろうし。
ゴージャスよりも素朴がいいひともいるだろう…。
人それぞれ。
状況だけ解説して、判断はひとそれぞれに任せればいいとは思うんだけど、そうすると、自分で情報を読み解く力がある人にしかわからないので、圧倒的に伝わりにくくなる。
伝わりにくい文章は読む人を選ぶことになっちゃうと、そもそもそういう事に興味を持たせるためのフックにはならない。
警告(アラート)は多くの人によまれた方がいいとおもうので、eml200さんも、渡辺千賀さんの書き方もこれでいいとおもう。波風立たない警告なんて無意味だから。
だから、一石を投じるという意味で日本社会に向かって言うことは別にいいんじゃないかなと思う。
暗黙知をほとんど要求していない。
このブログのこのエントリーはどちらかというとソースデータに近いので殆どの人には伝わらない典型。

b:id:JuliusCaesar「村を出られない奴は村ごと死ね」と聞こえるのはまずい。

すごく、いい表現。
まぁ、過激なほうが印象は残るよね。
反論が出るようなテーマっていうのはいいテーマ( ´,_ゝ`)
その波風たった様をみてそうじゃないよねという視点からのカウンターも必要。
視点や解釈は多角的であったほうが多様性があるよね。
多様性のある分野は伸展の余地がある。
経済と地理的な結びつきもうすこし掘り下げられたら楽しいかもね。
ロケーションとロジスティクスは今見たいな時代には面白いテーマなんじゃないかなと思う。

*1:過去30年の就職人気企業ランキング:http://rank.in.coocan.jp/shu30year.html