大和のチーフエコノミによる経済展望と分析

昨日、大和総研大和証券シンクタンク)のチーフエコノミストで、先の事業仕分けでも活躍された原田泰氏の経営者向けに経済セミナーに参加しました。
この年末経済セミナーは昨年に続き2回目になります。

2009年内外経済の展望 -民主党政権下の日本経済-
株式会社大和総研 常務理事チーフエコノミスト 原田泰
http://www.mitaka-ict.jp/data_news/20091218.doc *1

参加したというか、企画サイドなんですが、せっかくなのでまとめてみようかとおもいます。
資料とかもあるんだけど、公開していいかわからないし、なんとなく動画も撮ってしまったのだけど10GBもあるし、そもそも録画ダメなんじゃないかと思うので、公開予定なしです。

さて、内容を脳内補完しながら。


現状

アメリカの長期の成長率は2%(長期)ラインに。
日本の輸出について、中国には自動車など製品はほとんど輸出していない。
中国へは部品を輸出している。製品は輸出できていない。
中国は製品をアメリカに輸出しているので、アメリカ需要が冷え込むと日本の輸出は中国への輸出も止まる。
輸出と設備投資は連動している。輸出が増えれば設備投資も回復する。
家計消費水準指数はあまり落ちていない。
失業率は増えたが雇用調整助成金の効果があり失業率はかなり抑えられた方だ。
失業率はこれ以上はあがらないと予測。
石油価格の下落(輸入代金の総額が減る)は10-15兆円の減税に相当。これは少なくないインパクト。

政治について

自民党→組織へばらまき
民主党→個人へばらまき
民主党のほうが再分配策としてはより確実。
現在は税・社会保障調整後の相対貧困率が高い。直接配れば相対貧困率は下がる。
現政権の中心にいるひとたちがマクロ政策、成長戦略に興味がない。(特に上層部)
かといって自民党にも話しの通じる人はいない。
金融政策は間接的なので、担当となる政治家がそもそもいない。
「わしが橋をつくった」みたいに成果を言えない。
金融政策は軽視されている。

事業仕分けについて

民主党社会主義的(欧州の直接ばらまき型)
自民党共産主義的(お金の使い道に制限をつける)
資本主義、市場主義を標榜している立場からみるとどちらも残念だけどまだ民主党の方がまだいい。
今まで密室で決められていたことが白日のものに出たのは意義がある。
批判の大部分はそもそも誤解に基づくもの。
事業仕分けは目的について議論したものではなく、効果について議論したもの。
仕分けされる側は目的を訴えようとした役人が多くいた。
目的に反対しているわけではない。
財務省誘導だという批判はそうかもしれないが、公開したことで必ずしも財務省の意図したものにはなっていない。
いい加減だという話しがあるが、密室でいい加減に決められるよりも公開でいい加減に決めた方がいい。
※「いい加減」に関するところは他の人の発言の紹介
いままでは質問に答えず審議時間をやり過ごせば予算がついた。なので(予算を削る事業仕分けの場でも)質問に答えようとしない官僚が多い。

経済状況

デフレ宣言をしたのは評価
数値を見ると日銀は-0.5%インフレターゲット政策をしている(皮肉かな? デフレ政策)
日本だけが金融引き締めをしているので円高は当然
日本株だけが低迷しているのは金融緩和がほかの国に比べて足りていないから
経済成長は今年度は-3%で、来年度は1%程度だろう。

輸出輸入と内需

輸出をすれば生産性は高くなる。(細かく難しい説明があり)
輸出依存と成長率は相関性がない。
アジアは7倍に増えているのに日本は2.5倍しか増えていない。日本の輸出は相対的には増えていない。
円高で発展アジアの成長を取り込むことができなかった。
輸出が増えれば必ず輸入も増えるから、輸出の増を心配する必要はない。
日銀がやる政策は円安になると損するというような誤解に基づいている。

日本人の所得

格差の指標は様々あるが格差拡大といっても微々たるもの。
日本は不平等になっているというより貧しくなっている。
時系列でみても、国際比較でみても貧しくなっている。(グラフあり)

成長戦略

民主党は経済戦略を持っていない。
興味がなかったようだが、政権についたことによって少し自覚がでてきたかもしれない。
政府が予算をつけるのは衰退産業。ex.農業など3〜4兆円の生産額しかないものに3兆円を投資する。

科学技術

科学や技術を(雇用のための)公共事業にしてはいけない。
目的や試みにはどれにも理があるが、目的を達成するための効果や成果をあげられないのなら継続しつづけるべきではない。
政府が勝つ技術を選ぶのは難しい。結果論でしかない。
技術で勝って商品化で負けている。ex.液晶、太陽電池
技術の流出はとめられないが、商品化で負けてしまうのは(金融、経済)政策が影響している部分も多分にある。

為替と輸出、輸入

円高で競争力がない、韓国ウォンは定期的に暴落するが国をあげてダンピングしているようなもの。
おかげでサムソンは競争力を得、市場を席巻した。
円安を容認すれば、海外と比較して日本の労働賃金が下がり労働競争力がでる。

俺的キーワード

資本財。
資本財の取り扱いが増えても雇用を増やさない。

感想

日本の資本主義はよく成功した社会主義だと評される事がある。
なるほどと思っていたのだが、共産主義といわれると、すごいなるほどと納得。
そういわれりゃそうだな。
原田氏は個人へのバラマキは個人の創意工夫を阻害しないというような表現をつかっていたが、目的を制限してお金を配ることは少なくとも市場主義的ではすくなくともない。
いずれにしろ、資本主義じゃないことは確かだ。

日銀の金融緩和が足りていないことには同意。
政治家が金融政策をおろそかにしているのは政治家に同情的にならざるをえなくもない。
経済や金融などの政策はうまくいっている間は気がつけなくて、失敗や事故が起きて初めて評価される。
担当政治家なぞ居なくてあたりまえだ。
支持基盤や票田から考えても、もしそのような能力があるひとがいたとしても政治家になることは無いんじゃないかなと思う。


懇親会で雑談がてらスパコンの仕分けとかあれやこれやについてききました。
まあオフショットなので、書けるような事はないかな。
数字とかを眺めてると俺的には2010年も大変そうだなと思ったのだけど、そうでもない判断みたい。
「僕らは分析するのが仕事。それをもとに判断するのは経営者」だって。
世の経営者の方々がんばってください。




ふぅ。
経営者の才覚、、というより商売人として開眼したひ。
紅茶ばっかのんでねぇで、そろそろ稼ぎねぇと。。

*1:何故かワード…… 俺じゃないよ!俺じゃないよ!!