日本は起業家を育てる環境には恵まれてない

こんな記事があった。

http://jp.techcrunch.com/archives/20100227can-entrepreneurs-be-made/
シリコンバレーのVCたちに良い報せがある。みんな間違っている。起業家は生まれついてなるものではない、作られるものだ。彼らは決してあなたがたの考えているような人たちではない。私のチームが、成功した起業家549人を対象に調査を行った。その結果、大多数が起業家精神ある両親から生まれてはいなかった。学生時代には起業願望すらなかった。ただ人のために働くことに飽き、商品化したいすばらしいアイディアがあったか、ある日目が覚めて、引退する前に富を築きたいという衝動に駆られただけだ。

一方日本のVCには悪い報せがある。
(* ´¬`)。oO(報せるまでもないか・・・。)


みんな体感的に分かっているとは思うが日本では起業家が育ちにくい環境が醸成されつつある。
この記事を読んで自分の知っている環境や情報と比較して残念な気持ちになったので、この残念な気持ちをみんなに共有すべくまとめてみようかとおもう。



この図を張れば十分かな。

第2-3-1図 自営業主の年齢構成
〜高齢化している自営業主〜

第2-3-2図 資本金規模別の代表者の平均年齢の推移
〜規模の小さい企業で高齢化がすすんでいる〜

グラフで見てもピンとこない人のために1行でまとめておくと、
「ちっさい事業所の社長の年齢がどんどん上がってる。」
ということだ。



最近、中小企業白書が俺のお気に入り。いま2004年版を読んでる途中なので2004年のデータをつかうよ。ここらへんは最新版でもあまりかわらないと思う。グラフでもっといいのをみたのだが、どこでみたか忘れてしまった。
cf.http://www.meti.go.jp/hakusho/chusyo/H16/02-03-01-01.html#CLAUSE1
探すと多分もっと派手な図があるかもしれないが、2002年以降のデータをみつけられなかったので2004年監修のデータをつかう。

若いひとはなぜ創業できなくなったか

創業に必要な資金が年々上昇しているというのがまずあげられる。
かつては段ボール1枚、屋台一台あればお店がはじめられたが、今はお店ひとつだそうにもとても大きなお金と、そして網羅的な知識が必要になる。


資金面が創業時の困難の第一に挙げられており,資金調達は創業者にとっての重要任務の一つとなろう。
http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h11/zenbun/html/p1732000.htm

お金を稼ぐために商売をするのに、お金がないとはじめられない。これは残念な参入障壁だ。

第2-1-5図 創業者の会社設立前の職業(創業時の年齢別)
〜若年層ほど前職は会社員が多く、中高年層ほど会社役員、会社経営者であった者が多い〜

http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h14/html/14211130.html

お金があって、規制や手続きができるような人物となると、前職で管理職的なことをしてきた人物か、既に経営者であったような人が必然と多くなる。


創業は若い方が成功しやすい

若いうちはお金がない。経験も少ない。だが、若いやつがあたらしい事をはじめたときに成功する可能性は高い。
10年やってようやく事業が軌道にのってきたところで事業継承問題につきあたるようのは非効率だ、よほどの例外をのぞいて事業数は収斂してしまう。
合理的に考えた場合、新しいことをやらせるなら若いやつにやらせたほうがいい。

第2-1-107図 経営者年代別の業況
〜30歳以下の経営者の増益率が高く健闘〜

http://www.meti.go.jp/hakusho/chusyo/H16/02-01-06-01.html

これをみると、創業者が若いほうが利益を伸ばしやすいことが見て取れる。
若い人のほうが増益率が高いのは事実だ。
なのに、創業者を含む経営者の年齢があがりつづけている。



金がないと創業できないのに、若者には金がない。
これが理由だ。
挑戦者が少なければ成功者もすくなくなる。当然の帰結


日本で創業した場合、若手であればあるほど資金不足から外部からファイナンスしてしまい、結果として再起不能となっている現実があるようにおもう。
若いやつは経験がないなどの理由で失敗も多い。
スタート(イニシャル)にお金がかかりすぎているので、失敗したときのダメージも大きい。
これがさらに資金調達の難易度をあげている。

日本の資金調達市場の特殊性

中小企業においては俺の記憶力の曖昧な脳みそによれば99.7%が同族企業であった気がする。
うちみたいな一人有限も特定同族企業になるので、あたりまえといえばあたりまえだ。
世界的にみても97%ぐらいがファミリービジネスだったきがするので、これは日本に限った傾向ではない。


なのに日本では一部上場の非同族企業へ従業員として正規雇用を求める傾向がとても強いように感じる。
これだけ就職難といわれているのに、創業数が増えないのがそのひとつの証左だろう。
これは傾向として、中小企業、個人事業主レベルの商売が成立しにくくなったことがある。
リスクと比較して実りがすくないのだ。というよりはリスクが高すぎるのかもしれない。


創業するのに付きまとうリスクとはなにか。
そのものずばり、お金だ。



同族企業以外を考えてみよう。
善管注意義務あたりがキーワードかもしれない。
経営にコミットしてしまうと、出資分だけの損害に収まらない。
ビジネスパートナーがやらかしてた事に対して経営陣が個人としてコミットしなければならないのだ。ビジネスパートナーの不始末に自分の家族、親族の資産を巻き込んだ責任を追及される。


今は根保証契約だなんだと保護策がとりいれられつつあるが、これもまだある意味ザルで、誰かが承認もなく会社として借りてしまったお金にたいして連帯保証を結ばなくてはならない。
財務が公開された企業以外では不正というのは起きにくいかもしれないが、プライベートカンパニーだと何がおこっても善良なる管理者でありつづけるのはかなり困難だ。
同族企業以外あり得ない。
連帯保証の制度もなくなる兆しがあるのはいいことだが、現在のところこの制度が一番幅をきかせている。


また、基本、日本では投資というのができない。
投資をしたら贈与税がかかってしまうし、場合によっては出資法に触れる。


ポケットマネーで賄えるだけの資金力があるか、情報産業みたいに元手がほとんどかからないかぐらいしか創業の手立てがない。ぶっちゃけ能力があって、冷静な判断能力がある人には起業しにくい世の中だ。
というよりは創業するメリットがあまりない。
デメリットを超えるメリットがある人はそうはいない。


対応策もひどいよね

創業者が増えないので国はその手当として大学に創業をせまった。
産学連携とかいって大学発ベンチャーに投資をしたのだが、その結果は惨憺たるものだった。
・・・。
ここらへんも既にデーターとして出てるのでまた今度の機会にでも。


起業に至る5タイプ

おまけ、昔書いたやつから。

社会変革型

社会をこうしたいという理念先行で起業に至る。最初はすごく貧乏。軌道に乗ったあとの成長力がすごい。

マーケット指向型

商品ありき。最初は順調だが商品寿命に伴い頭打ちとなりジリ貧に。
マーケットを読み間違えると最初からコケルこともある。

技術指向型

売れる売れないが不明。あたりはずれが大きく社会のニーズとあうかも不明。

独立志向型

自分がどうなりたいかを優先順位にすえ行動するため意欲はあるが立ち上げ当初は苦労をする。

なりゆき型

あとがなく、がむしゃら、もしくはいつのまにか起業に至る。伸びる可能性もある。



マーケット指向型については資本増強型に類されるので、ぶっちゃけお金がないと現代では無理。
技術指向型は、こちらも失敗時の資金リスクが高くなりすぎている。売れるまで時間がかかりすぎるし、販路確保にも大きくお金がかかる。
社会変革型の社会起業家とか、冷静な判断をしないやりたいからやっちゃった型ぐらいしか今は無いよね。
ここについても、お金が相当必要ではある。
イニシャルコストもランニングコストもどれだけ減らせるかがカギになってくるが、普通に計算すると無理。


情報産業とかの産業自体が若く参入障壁がない分野や、大工とかの属人的な技術職でのれん分けが効く産業ならまだちょっとは芽があるけど、それ以外はどうだろうね。ちゃんと計算できるひとなら辞めておこうってなるんじゃないの。
自分は紅茶屋をやるときにそれなりに損益分岐を計算して事業計画とかたててあれこれシミュレートしてみたんだけど、黒字にならなくてね、これ無理じゃんと思った。無理だなーとおもったんだけど、冷静な判断ができないタイプなのでやってみたんだ。
やってみたら何か違うかもしれないと思って。
でも、想像通りでした。
そういう想定をしていて、いろいろ手当をしていたので大きくは失敗はしてないのだけど、普通に商売をやるのは厳しいねぇと悩んでいますよ。


ここまでくると経営者とかの個人の資質だけでなんとかなる領域じゃないよね。
俺より優秀な人を据えたら、もっと稼ぐのだろうけど、でも優秀なヤツだったら、もの売って100円稼ぐなんてちまちましたしたことしないで、カネつかってカネ稼いだほうが合理的だから商売っていう泥臭い層には落ちてこないとおもうんだ。お金を稼ぐことが目的ならお金をつかってお金稼ぐのほど効率がいいのは残念ながらないとおもうのよねん。


経営者の資質とか、起業家の資質とかそういうものは環境学習可能なものではあるとおもうけど、その環境が今ないんだよ。っと。ヒト、モノ、カネ。そういう資源が全部不足してる。
遍在(あまねく存在すること)ではなく偏在(かたよって存在すること)してるんよ。


そんな環境下でも起業したいとかいう奇特な人がいたら、なんとか軌道にのってほしいですね。
・・・人の心配している場合じゃないですが。
がんばれ俺。