偲ぶ、とある日本の草分け半導体エンジニア

自分や、身の周りの人のことをブログの内容に書くということはしないのだけど、多分ここで書かないともう書くこともないので、追悼の意味もこめて書いておくことにする。
自分の母方の祖父が亡くなった。享年99歳。腰が痛いと入院し、数日後、肺炎で亡くなった。
それまで頭もしっかりしていたし、歯も自分の歯だったし、寝込むこともなく99歳、大往生かなと思う。
祖父は自分が生まれたときにはもうお爺ちゃんだったので(あたりまえだね)、どんな仕事をしてきたのかとか、何をやってきていたのかなど殆ど知らない。定年後も75歳まであちこちの企業で働いていたらしい。
丈夫な人だ。
堅実で実直、寡黙な絵に描いたような職人肌の明治の男だ。
若い頃は真空管などのエンジニアで、後半は半導体製造を取りまとめていたそうだ。
最終的に何をやってどこまで関わっていたのかはよく知らないが、専門は半導体で技術部門の部長はやっているのかなと思う。
今から5〜60年も前に、電子産業があったのが驚きだ。
その企業は今では連結で10万人を越すまでに成長している有名な企業に成長している。
まあ、たぶん。
(もしかしたら、それらの企業たちもまた寿命を終えようとしているのかもしれないが…。)


そんなわけで、草分けの企業で半導体をやっていたとなると、テレビや、パソコンなどが日本に産業として存在するのは、爺さんの活躍がかなり重要な一旦を担ったはずだ。
たぶん。
亡くなった人の話しなので、誇張がはいってても許してほしい・・・。
うちの父もメーカー系で、しかも技術の人間で上の方まで知っているのが証言しているので、結構確度がある裏付けがあるかなと思う。
身内で裏とってもしょうがないけどさ。
余談だけど、うちの父ちゃんも職人肌だ。
爺ちゃんがたまたま技術の売込みで来たのに鉢合わせしてしまい、双方の部下達の手前名乗るわけにもいかず、かつ、名乗られもせず、内容で判断して、その売り込みを採用しなかったそうだ。どちらも縁故で仕事をしない堅物連中なのである……。


まあ、だいたい家は父方も母方も地味で堅物。
親戚見回しても技術屋さんとかそういう理系な人が多い。例外で紅茶屋がいるぐらい。
もしかしたら遺伝的に長生きだから強欲(greed)じゃないのかもしれない。
強欲な世界も見たことがあるのだけど、俺はまるで価値観があわなかった。
あまりに刹那的すぎる。
そういうのを否定するわけじゃないけど、遺伝的な気質というものはあるのかもしれない。
10年とかそういうスパンで考えればグリード路線もなくはないけど、孫の代まで考えるとどうだろうか。
見栄とかを張る合理性は殆ど無い。
ロングスパンで考えれば身の丈にあわないことを嫌うのも無理はない。
爺さんも引退を決意したのは銀行が経営陣に乗り込んできて、あれやこれやしだしたからだと聞く。
しかもそのほうが時代にあっていたと判断したそうだ。
爺さんが引退した75歳というと、1985年ごろ。ちょうどバブルの前奏曲が聞こえてきたころだろうか、そのときに何がおきていたのかは、なんとなく想像がつかなくもない・・・。



まあそんなわけで、俺もプログラムとかでご飯を食べれたのはリアルにご先祖さまに感謝だなとお手手を合わせるのでした。
半導体、もとい真空管が日本で製造可能なものにまでなっていなければ、その後に続く産業も生まれていなかったことだろう。
そういう技術を海外に移してまわったのも身内の行いなので、なんともいえないんだけどさ。
まあそれも万事塞翁が馬だからね。
まあ俺のやってることも4〜50年後に実になればいいかななんておもう。
気長なこって・・・。


んー。
思い返せば、メーカーこそ違うけど、俺が社会人になって一番最初にやったのも半導体関係のシステムだった。
就職氷河期時代、小さいソフトハウスに就職した自分。
まだ新人研修中だったのに気がついたらなんか自分だけ研修強制終了してシステム開発にまわされて、5月の連休のころには出張に行ってた。
まさか某メーカーの人たちもずぶの素人の新人が製造して、しかも導入に来ているとは思わなかっただろう。
そして元請けのメーカーの人たちも、まさか…送り込んだ技術者が入社1ヶ月目だとは思わなかっただろう。
今考えてもいろいろ無茶なマネジメントだらけだったが、おかげさまで地力を強制的に磨くことができた。
犠牲になったものがいっぱいあるきもするけど。。
大企業という場所でプレイしてきた先達達に、今の大企業はおまえには合わないからと言われたのを思い出す。
小さい会社に入っても大企業の仕事を出来るのはある意味その通りだとは思う。
小さいところであれば、いろいろなところでプレイできる。
億円動かす決済権がもしあったとしても、わずらわしいだけだろう。
今、技術者なるものたちはどこへ行けばいいのだろうか。
大企業には資本と人材は集まっているが技術はそうでもない気がする。
かといって中小にも技術など無い。
50年前の半導体のような世界はどこにあるのだろうか。
そう、探してうろうろしてたら、気がついたら紅茶屋をやっていた……。
あれれ、技術とはまるで関係ない世界だコレ!


どうしよう。
おじいちゃんごめん。
なんか従兄弟を見回しても一番堅実じゃない生き方をしている気がするけど、「どうだ?」って聞かれたときにちゃんと答えられるように何かを結実させることこそ我が本願。
心配させたまま逝かせてしまったな。。。
ああ、不甲斐ない。不甲斐なくて涙がでてくるぜ。
追悼のつもりが自分の情けなさの再確認になってしまった。
よーし、がんばっちゃうぞ!